そう思って調べ始めたら、これがまあ沼だった。DACとは何か。BluetoothのコーデックはAACとLDACでどう違うのか。アンプ内蔵レシーバーは必要なのか。レビュー記事を読み漁り、比較動画を観まくり、「結局どれが正解なんだ」と頭を抱えること数週間。調べれば調べるほどわからなくなる、あの感じ。
で、最終的にたどり着いた「私が見つけた最安価格の最高音質」がこれだった。
私の構成:合計 約6,500円
FiiO BTR11(Bluetoothレシーバー)——約3,520円
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3,500円で独立アンプ回路を積んで、LDACにまで対応してる。Bluetooth 5.3。重さ12.5g。バッテリーはAAC接続で15時間、LDACでも8.5時間持つ。クリップで服やバッグに留められる。この値段でここまで載せてくるかと驚いた。
Pai Audio 3.14 FLAT(インナーイヤホン)——約2,500〜3,000円
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オープン型(インナーイヤー型)の16mmドライバ搭載。カナル型のように耳を塞がないから圧迫感がなく、長時間つけていても疲れにくい。そして何より、このタイプ特有の自然な低音の広がりがある。カナル型が「耳の中に音を押し込む」感じだとしたら、こっちは「音が耳の周りに広がる」感覚。
再生デバイスはiPhoneでもAndroidでもOK。スマホとBTR11をBluetoothでつないで、BTR11にPAI-FLATを有線で挿す。セットアップはこれだけで完了する。
「あれ、ドラムのアレンジ変わってない?」——呪術廻戦が教えてくれたこと
この構成を手に入れた頃、呪術廻戦の2期OSTを繰り返し聴いていた。
中でもお気に入りだったのが「無下限呪術」。五条悟のテーマとも言える、ピアノとベースが重厚にうねるあの曲だ。何十回と聴いて、もう隅々まで知ってるつもりだった。
ところが。
劇場版で「無下限呪術」が流れた瞬間、「え、ドラムのアレンジ変わってない?」と興奮した。劇場のDolby音響で聴くと、ドラムの細かなフレーズがはっきりと聞こえる。これは劇場用に別アレンジしたんだな——そう思って帰宅した。
家に帰って、BTR11+PAI-FLATで同じ曲を再生してみた。
……入ってた。全部入ってた。原曲のアレンジだった。
つまり、劇場で「新アレンジだ!」と思ったドラムのフレーズは、最初からそこにあった。iPhone+AirPods(Proじゃないほう)の構成では、ピアノとベースはよく聴こえていた。でも、ドラムの低い音像——タムの響き、フロアタムの重い胴鳴り、キックの奥にある空気の振動——そのあたりが見えていなかったのだ。
劇場のDolby音響がそれを暴いた。そしてBTR11+PAI-FLATも、ちゃんとそれを鳴らしてくれた。
6,500円の構成が、だ。
なぜ AirPods(無印)では聴こえなかったのか
ちなみにAirPodsが悪いイヤホンだという話ではなくて、通話、Podcast、日常のBGMとしては十分すぎるほど優秀だと思ってる。
ただ、AirPods(無印)はBluetoothのAACコーデックで接続される。これ自体は悪くないのだけど、限られた帯域の中で「全体のバランスをきれいに聴かせる」方向にチューニングされている。結果として、ミックスの奥にいるドラムの繊細なフレーズは、優先度が下がって埋もれてしまう。
一方、BTR11はLDACコーデックに対応していて、最大990kbpsのデータを転送できる。AACの約4倍。情報量が段違いだから、ミックスの奥にいる音もちゃんと届く。さらに独立したアンプ回路が、PAI-FLATの16mmドライバをしっかり鳴らしてくれる。
オープン型のPAI-FLATは、カナル型と違って低音を「密閉して押し込む」のではなく、ドライバの大きさで「自然に鳴らす」。だからロック系の曲やドラムが効いた劇伴との相性がいい。iPhone+AirPodsよりも低音がよく出る——というより、「低音の中の情報量が見える」と言ったほうが正確だ。
あなたのお気に入りの曲にも、まだ聴こえていない音があるかもしれない
FiiO BTR11:約3,520円
Pai Audio 3.14 FLAT:約2,500〜3,000円
合計:約6,500円
6,500円で、劇場で聴こえたあの音が、自分のスマホからも聴こえるようになった。
高い機材じゃなくていい。自分が大好きな曲の中に、まだ聴こえていない音がある——それに気づけるだけで、音楽の楽しみ方は大きく変わる。そしてそれは、意外とリーズナブルに手に入る。
あなたのお気に入りのアニソン、お気に入りの劇伴。もう何十回も聴いたあの曲の中に、まだ出会っていない音が眠っているかもしれない。