コラム

Beyond the Anisong 第2回「K-POPがアニソンにやってきた——その戦略を読む」

Beyond the Anisong 第2回「K-POPがアニソンにやってきた——その戦略を読む」
金曜の夕方、テレビ東京系列で放送されているアニメ『BEYBLADE X』。小学生がベイブレードで熱くバトルする、コロコロコミック連載の王道キッズアニメだ。そのエンディングを歌っているのが、韓国のガールズグループaespaであり、後にオープニングを(G)I-DLEが担当した。日本生まれのキッズ向けコンテンツに、K-POPのトップアーティストが並んでいる。

これは偶然ではない。K-POPアーティストがアニメ主題歌に参入する流れは、ここ数年で急激に加速している。そしてその動きを注意深く見ていくと、単なる「コラボブーム」では片付けられない、明確な意図が浮かび上がってくる。

ベイブレードに見る「種まき」の論理



『BEYBLADE X』の主題歌ラインナップを、もう少し詳しく見てみよう。

2023年10月の放送開始時、OPはONE OK ROCK、EDは韓国のガールズグループaespaが担当した。その後、新章ではL'Arc~en~CielとPerfumeに交代し、さらにその次には(G)I-DLE(韓国の5人組ガールズグループ)がOPを担当している。

ここで重要なのは、ベイブレードが「小学生低学年から楽しめるコンテンツ」だということだ。コロコロコミックで連載され、テレビ東京系列で金曜夕方に放送されるこのアニメの視聴者は、まだ音楽の好みが固まっていない子どもたちだ。

その層にK-POPアーティストの楽曲を毎週届ける。これは偶然ではなく、長期的な市場開拓だと私は見ている。

思い出してほしい。第1回で書いたように、90年代にレコード会社がアニメタイアップをプロモーションの場として活用したのと、構造は同じだ。違うのは、今回の主語が「日本のレコード会社」ではなく「韓国のエンタメ産業」であるという点だ。子どもの頃に耳に馴染んだ音楽は、大人になってからも残る。ベイブレードの主題歌で育った世代が10年後にどんな音楽市場を形成するか——そこまで見据えた仕掛けだと考えるのは、うがちすぎだろうか。

加速するK-POP × アニメの接点



『BEYBLADE X』だけではない。K-POPとアニメの接点は、ここ数年で爆発的に増えている。

2024年秋には、&TEAMが『トリリオンゲーム』のOP「Beat the odds」を担当した。&TEAMは韓国のHYBEレーベルに所属する、日本人メンバー中心のグローバルボーイズグループだ。かつてはBoAが『FAIRY TAIL』のOPを歌い、ENHYPENが水球アニメ『Re-Main』の主題歌を務め、東方神起が『ONE PIECE』の主題歌を歌った時代もあった。だがこれらは散発的な事例にすぎなかった。

2025年に入り、流れは明らかに変わった。LiSAとStray KidsのFelixによる「ReawakeR」は、澤野弘之のプロデュースという日本のアニソン制作の本流ど真ん中で、日韓のアーティストが融合した楽曲だ。もはや「K-POPアーティストがアニメ主題歌を歌っている」のではなく、「アニソンの制作構造そのものにK-POPが組み込まれ始めている」と言った方が正確だろう。

なぜアニメなのか——K-POP側の論理



ここで視点を変えてみたい。K-POP側から見たとき、日本のアニメは何を意味するのか。

答えはシンプルだ。アニメは世界最強のコンテンツ流通網なのだ。

K-POP産業は、グローバル展開においてすでに圧倒的な成功を収めている。しかし音楽単体でリーチできる層と、アニメがリーチできる層は違う。特に日本市場において、アニメ主題歌は楽曲の認知度を爆発的に高めるチャンネルだ。Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」が世界的バイラルヒットになったのも、アニメ『マッシュル』というプラットフォームがあってこそだった。

K-POPのエンタメ産業がこの構造に目をつけないはずがない。しかも日本のアニメは80以上の国と地域で放送・配信されている。日本市場だけでなく、アニメを経由して全世界のリスナーにリーチできるのだ。

90年代の再来か、それとも新しい何か



第1回で、90年代のアニメタイアップにはレコード会社のビジネスとしての側面が大きかったと書いた。K-POPのアニメ進出も、その意味では同じ構造の繰り返しだ。

ただし、一つだけ決定的に違うことがある。90年代のタイアップは、日本国内のCD市場に向けた仕掛けだった。今起きていることは、グローバル市場を舞台にした、国境を越えたエンタメ戦略だ。アニメという日本発のプラットフォームの上で、日韓の音楽産業が融合し始めている。

これをどう評価するかは、人によって分かれるだろう。「アニソンが海外勢に侵食されている」と危機感を覚える人もいるかもしれない。だが私は、むしろ面白い時代が来たと思っている。

90年代にマーケティングの論理で始まったタイアップが、結果としてアニソンの質を飛躍的に高めたように、K-POPの参入がアニソンに新しい刺激をもたらす可能性は十分にある。LiSAとFelixの「ReawakeR」が示したのは、対立ではなく融合の可能性だ。

問題は、この流れの中で日本のアーティストやクリエイターがどうポジションを取るか。「Beyond the Anisong」——アニソンの向こう側には、国境の向こう側も含まれている。その風景をこれからも追いかけていきたい。

次回は、さらに大きなうねりについて書きたい。ガンズ・アンド・ローゼズがガンダム映画のエンディングを飾った——洋楽のレジェンドがアニメに参入する時代に、アニソンの世界はどう変わるのか。
フジキシンノスケ
著者 フジキシンノスケ

1980年代のアニメの音楽から感銘を受けてアニソンを聞いて育った黄金世代。音楽の変遷とアニメの変遷をダイレクトに受けつつ、思春期でバンドを組んでみたりした。アニソンはダサいと言われた時代。自分だけはかっこいいと思っていたから世間とのギャップに悩んだりもした。カウボーイビバップの菅野よう子とシートベルツに衝撃を受け、劇伴楽曲の世界に傾倒。幅広いアニソンを好む。